「聖の青春」松山ケンイチ＆東出昌大の渾身の演技と20世紀の空気 #東京国際映画祭

役作りのために松山ケンイチが20kg増量の激太りをして話題になった映画「聖（さとし）の青春」を東京国際映画祭で観ました。今年は傑作邦画が多いですね！


第29回東京国際映画祭の特別招待作品でクロージング作品だったのは「聖の青春」でした。
会場である六本木のEXシアターは、普段は舞台やライブにも使われる、天井が高くて広々とした空間です。

上映に先だって舞台挨拶もあり、森義隆監督と主演の松山ケンイチ・東出昌大に加えて、リオオリンピック出場のアスリートからの応援メッセージと花束贈呈がされました。

映画「聖の青春」とは

29歳の若さで世を去った将棋棋士の村山聖の生涯を描いた大崎善生のノンフィクション小説「聖の青春」を原作に、「ひゃくはち」「宇宙兄弟」の森義隆監督が実写化した映画です。

村山聖は1969年生まれで、当時めきめきと頭角を現した若手集団「羽生世代」と呼ばれる棋士の一人。
「天才」と呼ばれる羽生善治に対して「怪童」と呼ばれ、終盤にうなるような手を繰り出してくる発想が持ち味だったそうです。
小さい頃から難病を抱えて病院のベッドの上でもできる将棋にのめり込み、亡くなる直前に発した言葉も将棋の手でした。

みどころ

将棋が題材ですが盤上の真剣勝負の気迫は真剣での斬り合いのような緊張感はすごいです。
これは村山聖を演じる松山ケンイチと羽生善治を演じる東出昌大が本当に素晴らしいぶつかり合いを見せてくれました。
表情や仕草が生き写しレベルで、魂が乗り移ったかのようです。

あと、アラサー以上の人が楽しめる「1990年代・20世紀の日本」についての描写は完ぺきです。
懐かしいFAXやブラウン管のテレビ、紙の原稿用紙に書かれる原稿、どこでも喫煙自由だった感じなど、細かいところまで当時の様子が伝わってくるようです。
約20年前って、大昔感がありますね。
個人的にはふと映るルーズソックスの女子高校生が良かったです。（一時履いてました…）

それから、事前に知らなかったのですが、映画の中に「本物」が登場する箇所が幾つかあります。
・最初に一人暮らしをしていた狭いアパート（外観）は大家さんの好意で空き室のまま保存されており、今でも訪れる人がいるそうです
・長年使ってすり減った将棋の駒は本人が使っていたものだそうです
・演じる松山ケンイチは本人が使っていたネクタイを着用しているシーンがあるとのこと
・同じく東出昌大が当時の羽生善治のメガネを着用している（どうりでそっくりに見えるわけだ）

このうちすり減った将棋の駒は、何千回何万回も使われて摩耗した具合が半端ではない欠け方で、もう見ただけで胸にこみ上げてくるものがありました。

感想

何なんだ2016年は！邦画の当たり年過ぎます。
「シン・ゴジラ」「君の名は。」それに続いて欲しい「この世界の片隅に」そして「聖の青春」はこのラインナップに加えるべき一作です。

全体的に、昔のお涙頂戴映画とは違い、音楽で派手に盛り上げたりとか、悲しい部分を強調したりと言うことがないところも良かったと思います。
普通のシーンを淡々と積み上げていっても、物語や人物そのものに魅力がありますので、ことさら飾り立てる必要は無いのですね。

自分が長生きできないと知って情熱の全てを将棋に注いだ村山聖の人物像が周囲の人からも伝わって来るような、主演二人以外のキャストの盤石さも魅力です。

また、シリアスなだけではなく細かいところでは笑える箇所も随所にあるエンターテインメント作品なので、是非観に行って欲しいと思います。

「聖の青春」は、11月19日（土曜日）に劇場公開です。

▼映画公式ページ
映画『聖の青春』2016年秋全国ロードショー

▼予告編

▼原作

スタッフ＆キャスト

監督 ： 森 義隆
脚本 ： 向井康介
原作 ： 大崎善生「聖の青春」（角川文庫／講談社文庫刊）
撮影 ： 柳島克己
照明 ： 根本伸一
録音 ： 白取 貢
美術 ： 安宅紀史
音楽 ： 半野喜弘
主題歌 ： 秦 基博「終わりのない空」

キャスト
村山聖：松山ケンイチ
羽生善治：東出昌大
江川貢：染谷将太
森信雄：リリー・フランキー
村山トミコ：竹下景子

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