相貌失認に関して2年間でいただいたお悩みメッセージと私からの回答
ブラピのカミングアウトから2年。人の顔が覚えられない相貌失認(失顔症)の知名度は上がったと思いますが悩んでいる人も多いです。
俳優のブラッド・ピットさんが、自分は人の顔が覚えられないと告白して話題になりました。2013年の5月下旬でした。
その前から相貌失認のNAVERまとめを作るなどしていた私は、ブログにも相貌失認のことを書きました。
そして、悩んでいる人はメッセージしたら返信します、個人を特定できない範囲でブログに掲載する場合もあります、と添えました。
相貌失認の当事者としてテレビに映ったこともあり、2年間の間にメッセージを多数いただきましたので一部を紹介させていただきます。
(原文からプライバシー面を削るなど編集しています)
後半には私からの回答も載せましたので、メッセージを送る気力や時間が無かった方も参考にしてみてください。
お寄せいただいたメッセージ
「自分が悪いのだとずっと思っていました」
たまたまブログを拝見し、始めて相貌失認という言葉を知りました。
ブログの内容は、まさに自分のことのよう!
このことに悩んではいましたが、自分が悪いのだとずっと思っていました。
記事を読んで、私もこの病気かもしれないと思うと、涙が出ました。
「もうボケがはじまっているのではないかと心配になります」
私は人がヘアースタイルを変えたり、眼鏡をかけたりするだけで、誰なのかわからなくなってしまうし、物覚えが悪いのは歳とともにひどくなる一方です。ちなみに私は女性で、年は4X歳です。
それなのでこの歳でもうボケがはじまっているのではないかと心配になります。私が相貌失認であるのかどうか確かな事はわからないのですが、しゅうまいさんのブログでご自身のことをお書きになられた内容を読んで励まされた人達の中の一人であることは確かです。沢山の情報をありがとうございました。
「眼鏡をかけてる人が眼鏡外したら分からないよね」
『眼鏡をかけてる人が眼鏡外したら分からないよね。眼鏡かけてるなーってのは分かるけど、奥の目まで見えないもんね?』
と言ったら、「そんなことはない。おまえは失顔症じゃないか」と言われました。
「隣のお店の人に、昨日も来た人だよと教えられる始末」
毎日、たくさんのお客さんが来て、お店もたくさんある中で、うちの店から買ってもらいたいので何人ものお客さんに説明したり味見してもらったりしています。
その場で買ってくださる方はいいのですが、「ご飯食べてからまた来る」とか、「一通り見てからまた来る」という方もたくさんいます。自分で人の顔が、覚えられないと自覚があるので服装とかで何とか帰ってきたら声掛けしようと思うのですが、本当に覚えられません。
しまいには隣のお店の人に、昨日も来た人だよと教えられる始末です。
悩んでいたのですが、私だけではないと勇気が出ました。ありがとうございます。
「私は覚えの悪い、覚えようともしない人間だと思われているように感じます」
働くようになってから関わる人の人数が増えてきました。
少ししか関わらない人は、名前も顔も覚えられません。
しかし、この悩みを同僚は理解してくれず、私は覚えの悪い、覚えようともしない人間だと思われているように感じます。
そこで、インターネットで検索したところ、しゅうまいさんのブログに辿り着きました。この悩みを理解していただける人に話してしまいたくてメールさせて頂きました。
「集団や人混みでのしんどさの原因が判明しました」
娘が相貌失認であるとXX歳の時に自分で気付きました。
集団や人混みでのしんどさの原因が判明し、家族で納得出来て、本人も積極的に人を関われるようになりました。
みんながそうであるように願っております。
ブラッド・ピットの公表で説明が早く、有り難いです。
「彼氏の顔が思い出せません」
相貌失認についてしらべているうちに、しゅうまいさんのブログにたどり着きました。
私もおそらく相貌失認症ではないかと思っています。XX歳のころ、当時付き合っていた彼氏のことを、家に帰ってからふと思い出そうとしたとき、顔にモザイクがかかったような感じで思いだせなかった、というか再生できないという表現のほうが正しいですかね。
会うと「そうそうこの顔」と(失礼な奴ですよね)思うのですが、やっぱり家に帰るとわからない。そんな感じでした。
私からの回答
回答メールの抜粋を公開します。頻出の回答もあるので参考になるかと思います。(順不同)
顔を覚えるのが苦手な人が半数です
顔を覚えるのが得意不得意というのは程度問題で、
たとえ相貌失認(失顔症)であると確定しても、現在は何の治療法もありません。
「自分は人の顔を覚えるのはちょっと苦手」という人は多いと思いますよ。
もしどうしても自分の顔認識能力に疑問があるという場合は、私がブログで紹介した顔認識テストを受けてみて下さい。
相貌失認の顔認識テストの日本語説明を付けてみましたこのページのテストは終了しており今は受けられません
みんな歳を取れば忘れっぽくなる
同じような症状で悩む人は割合では2%と少ないですが日本全国ではたくさんいます。
私もそのことを知った時には、心が少し軽くなりました。
この症状には治療法が無いので、周りの人の理解が最大の助けになります。
少なくともご家族には説明しておくと良いかも知れません。
後天的に脳に障害をおって相貌失認になる人の中には、自分の家族の顔さえ分からない人もいるそうです。
そこまでひどくなければ、普通に生活はできますので、あまり思い詰めずに軽く考えていきましょう。
どんな人にも苦手科目はありますし、みんな歳を取れば忘れっぽくなりますよ。
人から覚えてもらえるようにする
「何か記憶する方法」ですが、私は自身の記憶力アップはあきらめています。
代わりに、「人から覚えてもらえるようにする」(こちらから声がかけられなくて機会を損失する割合を減らします)
「iPhoneでツーショット写真を撮ることを図々しくお願いする」(テレビ局や病院の方とも記念撮影させていただきました)
ということを心掛けています。
ほくろで覚える
どうしても失礼になるのでこの人は絶対に覚えなくてはいけない!という場合もあると思います。
その際には「ほくろ」が大きなヒントになります。
ほくろは突然なくなったり場所が変わったりはしませんし、眼鏡のように取れません。
場所は忘れないように紙か何かにメモをしておきます。
「小鼻の右2cm」みたいに詳細にしておけば、他の人と間違える可能性は低いと思いますよ。
2つ3つと複数覚えておけばまず間違いないです。
ブラッド・ピットと同じなの
この症状は個人の努力の範囲内であろうとされてしまい、自分のせいにしている人も多いのです。
色の見分けが難しい人と同じように、人の顔の判別が難しい人もいるというだけのこと。
治療法はありませんが、2%という有病率は決して小さくありません。
「私、ブラッド・ピットと同じ症状があるの」と軽く言い合える世の中になると良いですね。
病院での検査について
病院での検査ですが、電話での問い合わせをおすすめします。
(私の検査は横浜新都市脳神経外科病院でテレビ取材の撮影で行われました。)追記:現在は行っていないそうです
忙しい病院業務の中ではメールは後回しにされがちだと思います。
まだそういう現場や業界って多いんですよ。電話が一番です。
電話口に出た担当者がこの検査のことをよく知らないこともあるかと思いますので粘り強く!
なお、検査はMRIやMRAといった画像診断があり、保険も効かないので高額だと思います。
私はテレビ局が支払ってくれたので値段は知らないのですが。
相貌失認と分かっても、現時点では何の治療法もありませんので、「そうか」と思うだけですよ。
本当に受ける必要があるかどうかはお財布と相談して良く考えてみてくださいね。
ご理解ください
個人ブロガーにこんなにメッセージが来るなんて、予想していませんでした。
一人で思い悩んでいる人がいかに多いかが分かりました。
人口の約2%は顔を覚えるのに何らかの困難がある人と言われています。50人に1人です。
別に悪気があってとか、やる気が無くて覚えられないのではありません。(そういう場合もあるかもしれませんが…)
これは程度問題なので、自分の顔すら分からない人から、ちょっと時間をかければ覚えられる人まで、かなりの幅があります。
相貌失認の人がして欲しい配慮はこちらの記事に書きました。
相貌失認(失顔症)の人がして欲しい配慮ポイントのお願い
人が集まる場所では「名札」がとてもありがたいです。初回でも2回目以降でもです。
「え、しゅうまいさん、すぐに私の顔わかったよね?」という方は、私の繰り出す「あなたを知っていますよ光線」にまんまとだまされている可能性があります。(何回も会って長期記憶に入った人は忘れるまでは見分けることができています)
なにせ、この技を磨き続けて長いものでして。
顔が覚えられない方へ
私は自覚があるくせに誤爆してパーティーとかで飲み物を取りに行った帰りに「別の人にさっきの続きを親しそうに」話してしまうこともあるんですよ。
でも、それが新しい会話の糸口や出会いになるので損したことは無いです!少々恥ずかしいだけです。
接客業などで致命的に仕事に関係しない限り、相貌失認は「劣等感」と「恥」を捨て去れば何てことはない症状です。この境地に達するのには時間と環境は必要となりましたが。
実は、人の顔はそんなに厳密に覚えなくても何とかなります!
秘訣は「全員に感じ良く愛想良く親しくすること」です。
個別に顔で区別しようとするからややこしいことになっているわけで、発想を変えてみてくださいな。
あと、カミングアウト大事です。周りに理解者を増やしましょう。
脳に関するベストセラー著作が多数の東京大学の池谷裕二先生は名刺に「相貌失認」って自身の症状が明記してありました。
▼この対談本の中にもご自身の相貌失認について書かれています
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・ブラッド・ピットも顔が覚えられない!失顔症・相貌失認ってどんな病気?
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一人で抱え込んで悩み過ぎないで!