観光や地域活性化にイングレスって?「INGRESS×地方自治体」について聞いてきました

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「イングレスという陣取りゲームで観光客を呼べるらしい…」その噂の実体が分かるイベントに参加してきました。

「INGRESS × 地方自治体 セミナー&トークイベント powered by kakeru」は6月4日に株式会社オプトのオプトカフェで開催されました。

登壇者は
ナイアンティックの須賀健人さん
エージェント代表の堀正岳さん、おおつねまさふみさん
横須賀市の古崎絵里子さん
モデレーターはオプトの田村さん


左からkakeru江藤美帆さん、おおつねさん、堀さん、須賀さん、古崎さん、田村さん

kakeruとは


イベント主催のkakeruとは、最近立ち上がった「ソーシャルメディアの可能性を探究する」メディアです。

kakeru.me | ソーシャルメディアをもっと楽しく!

ずっと正体不明にするのかなと思われた「Ingress速報」の中の人のインタビューも載っています!
本業のお仕事と両立されているんですね。
Ingress速報のなかぴ氏に聞く「一人でもできる人気ニュースサイトの作り方」(インタビュー前編) | kakeru.me

ではでは、内容のレポートです。

「Ingressとはどんなゲームなのか」須賀さん


IngressはGoogleの社内ベンチャーであるNiantic Labsが作成しました。
Nianticとは、ゴールドラッシュ時代に人を運んだ船の名前です。

2012年にベータテストを開始して、2014年7月にiOS版が出たことで一気に広まりました。
日本は世界で米国に次ぐ第2位のユーザー数がいます。

イングレスを創り出す上で指針にした4つの原則があります。
1.世界が舞台 … 全世界がゲームボードです
2.動いて遊ぶ … 実際に外に出て動く必要があります
3.新しい視点から見ること … ポータルに隠された歴史を知ることもあります
4.現実世界の友情を作る … イングレスを一人で遊んでも限界があり協力プレイが必要です

人々はイングレスのようなものを求めていたということは、
1100万以上のインストールや200以上の国々で400万以上のGoogle+フォロワーがいて、5,000のローカルGoogle+グループがあり、1,000万以上のポータル申請があったという数字に表れています。

また第18回文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門大賞を受賞しました。
ネットは無限に繋がっていける反面自分の世界に閉じこもる人もいて、この両方をつなげることができるハイブリッドなコミュニティがイングレスです。

中にはタトゥーを入れる人がいたり、移動にヘリコプターを使うなど、本気度が高い人もいます。
ダイエットに成功してマイナス20kgの成果を出したり、高齢者が歩く習慣ができて元気になったりしています。

当初は人々は本当に動いてくれるだろうかという疑問がありましたが、行くのに困難なポータル(剱岳や吹雪の中の襟裳岬など)に到達する人もいました。

全てのエージェントを合計すると、1億5,000万キロメートルの地球から太陽までの距離と同じだけ移動していることになります。

これはエージェントなら途方も無いことと分かるのですが、太平洋や大西洋を覆うようなコントロールフィールド(CF)を作成する人も現れました。また平和を主張するためにイスラエルとレバノンのエージェントが協力し合って作成したCFもありました。
これは、この地点間を実際に飛行機などで移動した人がいるということです。

CFの形で絵を描くフィールドアートを作成する人たちもいます。

ソーシャルでの広がりも、日本国内では2年前の石巻のイベントで2桁だった参加者が2014年12月のダルサナ東京では5,000人以上が、3月の京都Shōninでは5,600人のエージェントが集まり、驚きを隠せません。

イングレスは人を呼ぶのに有効的かと聞かれたら「イングレスが最後の一押しになります」と伝えています。

例えば、福岡県の芦屋町は都市部から遠い過疎の自治体ですが、まだポータルになっていない魅力的なものがたくさんあるのでポータル登録のイベントをしたら57人もの参加者が集まりました。
地元熱を引き出すことができるのがイングレスです。

イングレスのグッズ作成は基本的に自由だけど利益を求めない範囲でお願いしています。
モバイルバッテリーのような商業ベースの公式グッズはライセンス契約をしています。

エージェントのグッズやポスター作成の創造性は素晴らしいです。
こちらから特にお願いしていないのに様々なものが作られています。

国内ではコンビニエンスストアのローソンとコラボをして店舗をポータル化しましたが、これによって実際に来店効果があったと聞いています。
駅から帰る道にローソンと他のコンビニがあったら、エージェントならローソンの方に寄りますよね。

今後もコラボ先は増える予定です。

イングレスのポータル情報などはAPIとして公開する予定です。
その上に載る「エンドゲーム」は開発が遅れていますが今年中にはリリースできる予定です。
地図ベースのゲームのプラットフォームを提供する立場になれたらと思います。

「なぜ大人がINGRESSにハマるのか」堀さん&おおつねさん


堀:なぜ大人がイングレスにハマるのか?「発見」と「出会い」がキーワードです。例えば烏帽子岩というポータルは昔はそこは海の近くだったことが分かり、飛行場を作るために壊されてしまって記念碑だけ残ったということが分かりました。

お:近所にあるハイキングコースについて、小学生の頃から住んでいたのに知らなかったことがありました。

堀:地元や旅先で発見があり、地元で仲間と出会うこともできました。地元で新しく友達を作るのはなかなかないと思いますが、普段会わなかったはずの人と友達になっていました。また、敵方の好敵手と出会うことも。

堀:イングレスの楽しみかたですが「レベルアップを楽しむ」「仲間との交流を楽しむ」「ミッションを楽しむ」「大規模イベントを楽しむ」様々な楽しみ方があります。

お:ガチ勢は大規模イベントの前は気配を消しているので、海外に飛ぶ人は成田空港近辺でのデプロイをしないなどして痕跡を残しません。上級者ほど見えなくなります。

堀:イングレスは現実の上にレイヤーされたもう一つの現実です。地図では分からない人間の活動が反映されています。

お:「困難到達ポータル」というのがあって、すごい山の上とか満潮時には通れないとか、普通の人が観光では行かなさそうなところだけど、イングレスだと行きたいという場所が存在します。

堀:行く理由が無いところに行くことになるのですよね。これはIntelマップをよく見てください。観光利用のヒントは必ずIntelマップにあります。

堀:イングレスは闘争心をあおることもあり、トラブルの原因となることもあります。大人になってから「くやしい」はあまりないので貴重ですが。

お:深夜に参拝目的でなくて神社仏閣に侵入したり、深夜に農道を通って作物泥棒に見られたりなどですね。

まとめ:「発見」「出会い」「闘争心」がイングレスのキーワードです。

「横須賀×イングレスについて」古崎さん


「横須賀市集客促進実行委員会」という実行委員会を作ってイングレス活用の活動をしています。
元はウェブデザイナーでしたが、イングレスをすることに…

イングレスは2014年7月のiOS版リリースの時期から始めました。
やってみると、横須賀近辺には、房総半島や伊豆半島などからリンクが張られていました。
これは観光との相性が良さそうだと思いました。

導入にあたってのハードルは
1.予め確保している予算が無い
2.ゲームの説明が難しい(当時は全部英語)
3.ライセンスの問題
4.岩手県に先を越されてしまった…
というところがあり、まずはガチな地元エージェント(堀さん&おおつねさん)にヒアリングをしてアドバイスを得ました。

そして、できるところ(お金がかからないところ)から始めて広げました。
・各自ポータル申請、説明文の追加、英語表記の追加(横須賀市は米軍など英語ニーズ高い)
・ミッションやメダルの作成
・Webサイト作成(後述)
・京急中吊り広告
・猿島航路INGRESS割引交渉 … 1300円を650円に!担当者がエージェントだったので話が早かったです

2014年12月18日に横須賀市長の記者会見を行いました。
特設サイトを作成しました。
▼こちら
STRATEGY BASE FOR INGRESS IN YOKOSUKA (※横須賀市観光情報サイト「ここはヨコスカ」に間借りする形で配置)

ルート案内は「詳しすぎるくらい詳しいですね」と言われるほど。初めての人でも回れるようになっています。

12月25日にはブロガーツアーをして20名ほどを横須賀市を案内して猿島にも上陸しました。
この時にちょうど合わせて、青のCFができて猿島が丸ごと三角形の中に沈みました。
地元エージェントで緑が有利にされると気に入らない人もいたということが分かりました。
企画段階から教えて欲しかったとのことなので、今は相談するように。

横須賀市公式ミッションも作成しました。当初14箇所予定が「うちは観光寺ではないので…」という話があり13箇所になりました。
期間限定のさくらまつりミッションも作りましたが、1日しか解放されない海軍内のミッションは1日で100人がクリアしました。

ミッションクリアのプレゼントキャンペーンでは、第1弾が応募290名、第2弾が256名でした。
北海道や岩手県などの遠方から応募がありました。

猿島航路のイングレス半額割引は、土日のみなので22日間で455名が利用しました。全体で5,652名のうち6%が割引を利用したことになります。この航路は前年比260%増の利用者数となりました。
こんなに利用者がいてびっくりしているので、ちょっと次回は無いかもしれません…。

また、イングレス特設サイトのアクセス数は2014年12月18日〜2015年4月30日の期間でPVが234万となりました。
「ここはヨコスカ」への検索キーワード「猿島」での訪問者は、前年比350%増で2013年850件だったのが2,973件になりました。
猿島が話題になった効果があったと思います。

新しいミッションとして「岩手×横須賀 友情の架け橋ミッション」を作成しました。
両方の地にゆかりの深い米内光政に関連したポータルを巡るものです。
長距離の移動を含むものなのに既に5人がコンプリートしています。(コンプリートするとオリジナルステッカーがもらえます)
他にも横須賀ゆかりの偉人に関するミッションを追加予定です(12ルート)

今後の予定ですが、以下のような施策を考えています。
・貸し出し充電器の充実、PR
・ミッションの追加
・既存イベントに合わせた期間限定ミッション
・ルート紹介の充実
イングレスだけでなく、横須賀におけるサブカルチャー(アニメ・漫画・ゲーム)の魅力も発信していきます。

今後の課題ですが以下のようなことが挙げられます
・Google主体のゲームのため、いつ終わるか、何が変更になるのか分からない。
・ユーザーではない人からのイングレスで困った場合の相談窓口
・地域で楽しんでいるエージェントとの関係

自治体がイングレスをはじめるには?
・担当者がイングレスを好きに
・地域コミュニティに参加すること。10人に1人は「こうすれば」と思ってるので話を聞く
・オフ会に積極的に参加する
・上司に説明する根気強さが必要 ← これが一番重要です!!

パネルディスカッションから抜粋


お:海だけでなく山も地形的に有利なので、海無し県の方も大丈夫です。

須:ミッションを申請するのに個人アカウントではなく自治体アカウントでやりたいという方のミッション申請はレベル関係無く受け付ける場合もあります。ただし中の人の本アカウントはレベルがある程度行っていることが望ましいです。

古:公式のミッションを設定する時に、駐車場が無い場所は避けたり、基本的に徒歩で行けるところを設定するようにしています。

須:ポータルに歴史や芸術性は必要と考えています。単なるお店の看板などは粛正する予定です。ユニークで価値があるものがポータルです。

堀:地方自治体の人はポータルの説明文を追加して欲しいです。ポータル申請する人は急いでタイトルだけ入力して申請することが多いので、後からでも足せるので説明文を。

須:それに関して中野区からはExcelで百選のポータル情報が送られてきたので対応する予定です。

須:自治体や企業がイングレスのロゴ入りグッズを作るためには、まずご連絡ください。利益を出さない価格のユーザー作成グッズは制限しないつもりです。ご当地キティみたいなご当地イングレスが生まれても良いと思います。

質疑応答から


Q:地域でウォーキングイベントがあるがイングレスを絡めるにはどう相談したら良いか

須:名刺交換しましょう。Nianticは人数が少ないのでマンパワーには限界がありますが…。そういうイベントで地元のエージェントと共に作ることが不可欠でしょう。

お:UPVというのがあり訪れたユニークなポータルの数ですが、これを「100増えます」で集客力あると思います。

堀:自治体側のゴールは何か?で違って来ると思います。猿島は「イングレスで話題になったあの島」ということになりこれはお金を積んでも得られない評判です。イングレスは最後の一押しになり、横須賀は都心からは遠いがこの一押しで人が来ました。

Q:市長にどのような説明をしてどの程度理解してもらったのですか?

古:市長にエージェントになってもらった。以上。です…。会見ではエンライテンドとレジスタンスの両陣営同数のエージェントで望み、市長の陣営は明かしませんでした。

Q:グッズを作って呼び込むのに嬉しい品物は何ですか?

お:DarsanaやShōninの頒布会では、陣営の色のもの、身につけるもの、持ち歩くものが人気でした。

堀:バーチャルにしかないものが現実に出て来たものが人気あると思います。手ぬぐいは伝統的な柄しか無いはずなのにイングレスのロゴがあるのでうけたかなと。

須:イングレスでは自分がアバターなので、着飾りたいという人が多いようです。

堀:ネタのスピード感勝負なものもありました。横須賀のカレー屋さんのコロッケシールドとか。あとイングレスぜんざいはぜんざいに氷の柱が8本ささっているだけなのに、イングレスだと言い張ったのが強い。

Q:地方と都心のエージェント数の割合は?

須:ポータルが集中するのは都市部なので都市部に集中しています

お:都心部でも駅から1kmもずれると、個人が認識できる程度になる地域もあります。過密なのは一部。

Q:自治体間の連携ができたら面白いと思うのでアドバイスを

古:ミッションで人を動かす。クリアしたらプレゼント施策も。公式ミッションやイベントの周知も大事。近隣との連携は面白いと思います。

堀:相手から面白いネタを引っ張り出すのが大事。岩手県と横須賀市の偉人ミッションは良い観点。

お:地元ガチ勢はポータルを隠そうとします。山を守っている人は「山のポータルは面白くないよ」と風説の流布をするので信じないことです。

今回の地方自治体目線でのポイント


・イングレスはダウンロード&プレイは無料!何かを買ってもらう必要無し
・イングレスは実際に人を動かしている!僻地まで太陽に届く距離まで
・自分もプレイヤーになってレベルもミッションが申請できるまで上げておくことはマスト
・とにかく地元のIntelマップを観察すること!
・地元エージェントとの関係を大切に!両陣営に配慮して!

今回のプレイヤー目線でのポイント


・ローソンのようなコラボ先が増えるみたいですよ!
・価値の低いポータルの粛正があるみたいですよ!
・中野区に百選されたポータルの情報が充実するみたいですよ!

感想


本来は地方自治体の方向けのセミナー&トークセッションでしたが、スピーカーを見て絶対に面白い内容が聞けるはず!と思って一般枠で申し込んで参加しました。

「人を呼び込む」立場の方が知りたいコトってこういうことなのか!と、とても興味深かったです。

私の少ない地方遠征の経験からすると、都心とは全然違ったプレイができるのが地方ポータルの魅力だと思います。
まず、ポータル密度が少ないので、1つ1つを興味深く観察するし、記念写真も撮ったりします。再度訪れることが簡単で無い場合は特に。

なので、ここに「説明文」が充実したポータルがあったら、観光ガイドになりますので良いと思います。
また、巡りやすいミッションの提供があると嬉しいですね。

もしイングレスで外から来る旅行者としての視点でのアドバイスが欲しいなどありましたら、連絡先からメッセージいただければと思います。

今回のイベントについて更に詳しく知りたい方はネタフルのコグレさんがレポートを公開されています。
[N] 【Ingress】イングレスは地方活性に繋がる!?横須賀の中の人と横須賀のエージェントが語る「INGRESS x 地方自治体セミナー&トークイベント」レポート

私が以前に書いたスタートガイドもご参照ください。
Ingress(イングレス)を始めたい女性のための安全な開始方法

この記事を書いたのは

しゅうまい(@shumai)です。 新しいこと楽しいこと不思議なこと、わくわくすることが大好きです。iPad Pro+Apple Pencilでの手書きメモがお気に入り。→ 詳しいプロフィール

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