「イミテーション・ゲーム」はコンピュータに携わる全ての人に観て欲しい映画
アラン・チューリングがいなかったら、2015年現在の便利な生活は無かったかもしれない…。そんな人工知能の父について知れば知るほど悲しさが訪れます。
映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」の主な舞台は第2次世界大戦のイギリスです。
当時、ドイツ軍が通信に使っていた装置「エニグマ」の暗号を解読することが課題でした。
エニグマはタイプライターのようなキーから平文の一文字を打ち込むとランプボードの一つが点灯して暗号文の一文字が得られる仕組みです。
暗号を複合する時にも同じようにキー入力するとランプボードから平文が得られます。
奥には3枚のローターを入れるところがあり、いくつかあるうちのどの3枚を使うか・セットする順序・目盛りの初期位置が暗号の鍵の一部でした。
エニグマ (暗号機) – Wikipediaより
この暗号を解くにはとても莫大な回数の計算をしなくてはなりませんでした。
しかし、暗号の鍵は毎日変えられるので、解き終えることができないうちに次の日になってしまいます。
鍵が変えられる時刻が来ると、今日もダメだったー!という皆で落ち込むシーンが出て来ます。
イギリス軍が使っていた暗号解読装置がBombeです。
映画の中ではクリストファーという名前が付けられていて、その由来を知った時には涙が出そうなくらいの衝撃がありました。
photo by Antoine Taveneaux
Bletchley Park Bombe4 – Bombe – Wikipedia, the free encyclopediaより
アラン・チューリングが同性愛のため迫害されていたということは、私はあまりよく知りませんでした。
ただ「名誉回復」のニュースがあったことだけは知っていました。
おそらく、その前後にこの映画を作ろうという話が持ち上がったのではないかと思います。
アラン・チューリングの名誉回復のための映画っぽく、チューリングの変人エピソードみたいなものは少なめになっています。
実際は、花粉症のためガスマスクをかぶって自転車で通勤していたとか、マグカップを盗まれないようにラジエーターパイプにチェーンでつないだりとかの、天才だけど人目を気にしない行動があったようです。
(アラン・チューリング – Wikipediaより)
チューリングたちは見事にエニグマの暗号を解き明かし、戦争で失われたはずのたくさんの命を救いました。
ただ、その後の迫害されぶりが本当に切ないです。
もしイギリスがこの天才の才能を活かしていたら、コンピューターの歴史の針はもっと進み、2015年の現在ではSiriやPepperのような人工知能が人間より賢くて使える存在になっていたかもしれません。
エンディングの間中、私は悲しみに支配されていました。
歴史上の愚かな振る舞いを後から直すことはできません。
それでも、コンピュータが将棋でも人間に勝てるようになった時代が来て、チューリングはどこかで笑っているかもしれません。
コンピューターやIT系の仕事に携わったり目指している人は必見の映画です。