人間の美しい心を描き出す絵本「花さき山」
WBSのスミスの本棚で紹介されていた絵本を読みました。短いのに心を突き動かされる物語です。
この表紙の切り絵の絵柄を他で見たことがある人も多いのではないかと思います。
「花さき山」はとても短いお話です。
主人公の「さき」は山を迷っているうちに「山ンば」と出会います。
そこで教えられたことは、ふもとの村の人間がやさしいことを1つすると、きれいな花が1輪花さき山に咲くということでした。
さきの家は貧乏だったので、祭りに着ていく着物を自分は諦めて妹に譲ったのでした。
その時に美しい赤い花が咲きました。
さきは他にも双子の兄が弟のために母親のおっぱいを譲って我慢した時に咲いた花を見ます。
花だけではなく、山も、命を賭してやさしいことをした人のためにできました。
村に戻ったさきの話を大人は笑いましたが、さきは「あっ!いま花さき山で、おらの花が咲いてるな」と思うことがありました。
簡単にストーリーを略してみましたが、実際の絵本の文章は、民話調の味わい深い心に迫る文章です。
是非、手にとって読んでみてください。
私はこの本に子どもの頃には出会えなかったのですが、大人になった今出会えて良かったです。
さきは二度と花さき山に行くことはできませんでしたが、自分がしたことで美しい花がどこかで咲くことを心の支えにして残りの人生を生きていったのだと思います。
観測者がいないところで咲く花は、きれいだと思う人がいなくても咲いています。
本当は、良い行いや人のために我慢したり譲ることの、行為そのものが美しいのです。
しかし、そのことを特に幼い子どもに分からせるには、ちょっと難しいかもしれません。
そのために、きれいな花が咲くというお話にして、しかも民話調にしたところが素晴らしいと思います。
私は長女ですので、上の子が我慢する話は号泣真っ直ぐ路線でして、かなり補正が入っているかもしれませんが、それを割り引いても良い絵本だと思います。
夏休みにお子さんに読み聞かせてみてはいかがでしょうか。
また、日頃いろいろ我慢が積み重なってストレスフルな方にも目を通していただきたい心洗われる一冊です。